子宮頸がん予防ワクチンが日本でも使用可能になりました。サーバリックスというワクチンの他にガーダシルも使用できます。両者で接種間隔が異なるのでご注意ください。
サーバリックスはヒトパピローマウイルス(HPV)16と18にたいし有効で2価ワクチンといわれ、ガーダシルはHPV16、18のほかにHPV6と11にも有効な4価ワクチンといわれています。このことから最近ではガーダシルを接種するかたがほとんどです。



子宮頸がんとは?

子宮がんには子宮頸がん(子宮の入り口付近)と子宮体がん(子宮の奥)の2種類があります。子宮頸がんの99%はヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)の感染が原因です。

また若い世代に多く、20~30才代で急増しています。HPVは皮膚や粘膜にあるごくありふれたウイルスで、100種類以上が確認されていますが、このうちの15種類ほどが発がん性HPVと呼ばれています。発がん性HPVは主に、性交渉によって感染します。

子宮頸がんにかかると?

進行すると、生理以外の出血、おりものの異常、下腹部や腰の痛みなどがありますが、自覚症状のないまま、検診でみつかることもあります。特に若い世代では検診をすることがすくないので問題です。

毎年1万人以上の人が子宮頸がんになり約3500人の人がなくなるとされています。

子宮頸がんの治療法は?

ごく初期に発見できれば、多くの場合、子宮を温存することができますが、進行すると子宮全体の摘出や放射線、抗がん剤治療が必要になります。また手術後の合併症として排尿障害や排便障害が残ることも問題です。若い世代では検診を受けることが少ないため、みつかった時には進行していて大手術になることが多くなります。

子宮頸がん予防ワクチンの安全性は?

サーバリックスにはワクチンの効き目をよくするための2種類のアジュバント(免疫増強剤)が添加されています。1つはアルミニウム塩で、国内で市販されているワクチンによく使われています。もう1つは、MPL(3-脱アシル化モノホスホリル脂質A)で、海外で市販されている他のワクチンにも添加されていますが、国内では初めてのものです。

頻度10%以上の副反応としては、かゆみ、注射部分の痛み・赤み・腫れ、胃腸症状(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など)、筋肉の痛み、関節の痛み、頭痛、疲労があります。重い副反応として、まれに、アナフィラキシー様症状(血管浮腫・じんましん・呼吸困難など)があらわれることがあります。したがって接種後はすぐに帰宅せず30分はクリニックにすぐ来院できる場所にいてください。

当院で接種した従業員全員約20名の範囲で痛み、発熱、腫れなどは全くありませんでした。

ご存じのように現在ワクチンによる副作用の問題でワクチンの推奨が止められていますが、この副作用は科学的根拠が全くないもで、むしろ積極的に接種すべきとされています。この問題に対してノーベル賞学者の本庶佑氏が意見を述べているので参考にしてください。

子宮頸がん予防ワクチンの接種はどうすればいいの?

子宮頸がんの発症は20歳代以降に多いですが、発がん性HPVに感染して発症まで数年から10数年かかります。したがって感染する可能性の低い10代からの接種が効果的です。成人女性の臨床試験では子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス)により発がん性HPVの持続的な感染および前がん病変が予防できることが確認されていますが、子宮頸がんに対する予防効果については確認されているわけではありません。この点についてはまだ検討段階です。したがって子宮頸がん予防ワクチンを接種しても定期的な検診は必要です。

子宮頸がん予防ワクチンの接種スケジュール

サーバーリックスは0、1、6ヵ月、ガーダシルは0、2、6ヵ月で、計3回の接種が必要です。3回の接種をしないと十分な効果は得られません。腕の筋肉に注射します。3回の接種途中で妊娠した場合には、その後の接種は中止となります。

子宮頸がん予防ワクチンの副作用情報に対する見解

2018年ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授は、現地時間の12月8日13時半より、ストックホルム市内のホテルにてノーベル・スピーチ後、初となる記者会見を開いた。

会見の最後にNHKの記者が、子宮頸がんワクチン問題を含む日本の医療政策における課題に関するコメントを求めると本庶氏は、「NHKさんがこの問題を取り上げることは非常にいいことだと思う。マスコミはきちんとした報道をしていただきたい」と述べた。
また、「子宮頸がんワクチンの副作用というのは一切証明されていない。日本でもいろいろな調査をやっているが、因果関係があるという結果は全く得られていない。厚労省からの(積極的接種)勧奨から外されて以来、接種率は70%から1%以下になった。世界で日本だけ若い女性の子宮頸がんの罹患率が増えている。一人の女性の人生を考えた場合、これは大変大きな問題だ。マスコミはワクチンによる被害を強く信じる一部の人たちの科学的根拠のない主張ばかりを報じてきた」と続けた。

医学や科学の問題について論じる際にマスコミ関係者に注意してほしい点として、「科学では『ない』ということは証明できない。これは文系の人でも覚えておいてほしいが、科学では『ある』ものが証明できないことはない。『証明できない』ということは、科学的に見れば、子宮頸がんワクチンが危険だとは言えないという意味だ」と述べ、「なぜこれを報道しないのか。先日学会でも講演したが、ルワンダなど(リソースの少ない国)でもワクチンを導入して子宮頸がんが減っている」とコメント。 「このことに関し、はっきり言ってマスコミの責任は大きいと思う。大キャンペーンをやったのは、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞。メジャーなところが全部やった。そしてNHKも責任の一端があると思う。今からでも遅くないから、きちんと報道してほしい。実害が生じている」と述べ、主要報道機関が誤った情報を広げたことにより、日本人女性が必要なワクチンの接種を差し控えている現状について警鐘を鳴らした。

本庶氏は10月5日に藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)で行われたノーベル賞受賞決定後の初講演でも子宮頸がんワクチン問題について取り上げ、「国際的にみても恥ずかしい状況」とコメント。10月11日には根本厚労大臣を訪問し、子宮頸がんワクチンの積極的接種の勧奨再開の要請を行った。また以前より、医療経済やQOLの観点からワクチンをはじめとする予防医療の重要性を繰り返し訴えているが、30分という短い会見のうち子宮頸がんワクチン問題に関するコメントは約7分に及び、本庶氏のこの問題への懸念と関心の高さを改めてうかがわせた。 関係者によれば、どのメディアの記者も子宮頸がんワクチン問題に関する本庶氏の発言を真剣な面持ちで聞いていたというが、12月11日現在、この問題に触れたメディアはない。 なお12月7日、ノーベルレクチャーの直後に行われたメディア非公開のレセプションで本庶氏は、子宮頸がんワクチン問題についての著作のある筆者に「(子宮頸がんワクチン問題に関する)報道は変わりましたね」と声をかけた。 それだけに、ノーベル医学生理学賞受賞者が時間を割いて強調した、わが国の重要な医療問題に対するこうしたメディアのありようは残念でならない。